ブログ

リニューアル

【相談事例】自主管理マンションのエレベーターリニューアル

2024年3月23日

2024 03 23
日が差し込む庭から見るマンションの外観

自主管理マンションのエレベーター保全の背景:実情

国内のほとんどのマンション管理方式では管理会社に全部委託か一部委託が約90%で、区分所有者のみで管理全部(基幹事務:建物保全管理、出納業務等)を行う自主管理は1割程と言われています。国土交通省の平成30年度調査からの無作為選出アンケート結果からなので一応の目安程度の参考にしかなりませんが、自主管理方式の管理組合は少数派と言えます。

確かに管理費、修繕積立金の徴収や管理に関する出費、支払いの会計処理から建物全般の保全管理、劣化処置対応とその他の住民間運営上の取り決め、協議進行等を自らがリーダーシップを取って円滑に進めることは並大抵のことではありません。

今回紹介するのは、そういった自主管理の管理組合でもエレベーターリニューアル工事という問題に対して私と二人三脚で解決する事ができた実例を紹介したいと思います。

エレベーターリニューアル工事相談に至るまで

マンション概要

  • 築38年
  • 23戸
  • 8階建て
  • ロープ式エレベーター
  • 保守管理:メーカー系保守

ご相談からヒアリング

自宅で個人事務所経営をされている理事長様から、ホームページ検索からお問い合わせされました。竣工以来からメーカー系保守会社でフルメンテナンス契約を継続してきたが、部品供給が終了するのでリニューアル工事を検討してほしいと営業担当から連絡があった。

ちょうどその頃に故障もあったので原因と処置の報告もしてほしいと依頼したが、約半年間音沙汰がなかったので、再度連絡して見積もりを提出してきたが詳しい説明もなく、金額について再度検討しますと後日改めて提示となったが、上司同行で提示してきた金額はわずか定価から端数を切った数万円程度だった。とにかく金額提示だけで必要性であるとか工事内容といった具体的な説明がなく住民への説明ができないので、色々とネットで検索して調べていたら私のホームページにたどり着いたのが相談までの経緯です。

理事長のエレベーターリニューアルへの決意に対して感じたこと

一連の経緯から、メーカー系の保守会社の傾向として営業対応先の多くが管理会社を経由したフロント担当者や、その他専門部署のある法人が窓口のケースが多い中、管理知識、経験もない一般の個人の理事長にどこまでエレベーターの専門的な説明をすればよいのか、提示金額にしても比較検討も出来ないので無理に金額も下げなくても結局発注してくれるだろう・・・といった推測、判断もあったのではないかと思えますが少し誠意に欠ける対応と感じとれます。

私に相談された時点ではすでに担当者を通じて、会社全体の信頼、信用が損なわれておりリニューアル工事の金額の高い、安いの問題よりか、今まで大手メーカー系列保守会社に委託しているといったブランドイメージとフルメンテナンス契約という、いわゆる保守点検も保守部品もすべてお任せしているといった全面、絶対的な安心感を持たれていたのがこの半年間で損なわれてしまっている印象を受けました。

最初に、メーカー系保守会社以外でも独立系のエレベーター保守会社という存在についての説明から、それぞれの特徴、内容、実績、市場への展開状況等からリニューアル工事と工事後の保守サービスについても何の問題もない事、これからの見積検討、発注、工事に向けての管理組合内合意形成進め方など提案、助言、アドバイスする事により一気に事態打開が図られました。

エレベーターリニューアル工事のマネージメントプロセス

まず、理事長様から以下の要望が挙げられました。

工事期間(エレベーター停止期間)は土日含んで8日間

工事仕様からは、ほとんどの施工会社からの最短施工日数は10日間でしたが、数回にわたる搬入業者、据付業者との現地調査を重ねて搬入ルート、ストックヤードスペース、

人員計画、作業手順について綿密に打ち合わせとそれに基づいた指示、確認を行い土日作業入れての予算内で8日間施工可能の工程を確保しました。

エレベーターかご内の意匠工事について予算、工事期間、必要性について提案

かご内パネル表面部と床面タイルの劣化損傷状態確認と施工期間、参考に施工後のイメージパースを提示して意匠工事見積金額の相対検討の材料から必要性の検討をいたしました。

  • 年数の割には戸数も少なく利用頻度少ないので傷や色褪せは少ない状況。
  • 竣工依頼、マグネット式の保護マットを装着していたのも損傷防止に起因。
  • かご内前面が新築時のような見栄えになるが、一般内室壁のシート単価とエレベーター内のシート単価では作業性の点から割高(30~40万円)
  • エレベーターリニューアル本体工事8日間に意匠工事に1日間必要となる。

以上から、かご内意匠工事は見送るが、代替案として竣工時から装着の保護マットを入れ替える事を提案、保護マットのカラー、カーペット調、絨毯模様調等の素材種類も数種類ある事から意匠性も高まり、工事期間も必要ない事から、かご内保護マットの取替となった。

*この追加仕様の折衝で、合わせてかご内天井照明についても蛍光灯からLED照明の取替を施工会社の無償サービスとなった。

工事代金の支払い条件に付いて

通常、契約時に前受け金として半分の金額を支払い、工事完了時に残りの半分の支払いとするのがほとんどの施工会社の条件としていますが、組合として契約から工事着工まで約半年間以上と長期間にまたがる事から、契約時と工事完了時に加え、着工時の3分割の支払いサイクルとしたい要望でした。

管理組合としては半分とはいえ数百万円を先に支払って半年先に何らか不足の事態でのリスクを考えての事ですが、施工会社にすれば、管理組合といっても会社法人ではなく、実態は個人のマンションの管理をする集まりなのでマンション管理組合に対して与信リスクをどこまで容認できるかが問題の焦点でしたが、過去の修繕積立金の積み立て状況、管理決算書の出納帳簿からも問題ない事を確認し組合要望の3分割支払いでの見積条件での検討となりました。

エレベーターマネージメントの業者選定、工事管理マネージメント

まずは、現場調査の上、こちらのマンションに適応できる独立系保守会社から見積徴収し、内容について詳細確認、説明と住民の皆様がご理解し易いような工事全般についての資料作成、質疑応答を重ねて承認、発注となりました。工事までの住民様への告知だったり現場周辺道路が狭く機材の搬出入に近隣道路の制限もあったので、関係する周辺地域への工事告知、連絡等も施工業者と綿密に打ち合わせの上実施し問題なく完了しました。

確かに、管理会社の存在なく管理全般、しかもエレベーターの基本的な知識もない自主管理の理事長がここまで踏み込んだ行動、判断するには専門知識とそれらをかみ砕いて内容を伝え管理組合とエレベーター施工業者を繋ぐコンサルタントの存在なければ難しいと思います。

*業者選定等のプロセスについてはホームページ事例集の“CASE2”で詳しく紹介していますのでご参照ください。

エレベーターリニューアル工事の目的とその方向性さえ明確になれば自主管理でも合意形成は難しくない

ほぼ100%に近い確率で所有者、利用者からの発案でエレベーターリニューアル工事をしようといったケースはないでしょう。

今回の事例も最初はエレベーターリニューアル工事が直接のきっかけと言うよりは、偶々故障が起こった、営業担当者の回答、対応が不十分に感じた、建物全体の長期修繕計画見直しの検討をするのに偶々エレベーターの一番優先度が高く、具体的検討に入れるタイミングだった・・・。

すべて共通する事は現状の問題点をそのまま放置せずに“自分たちでどうにかしなければならない”と考える努力の一歩を踏み出した事ではないでしょうか?

確かに戸数が少ない小規模マンションなら皆さんが理解、納得できる内容であれば合意形成は難しくないのかもしれませんが、共用部における管理費、修繕積立金の割合は大きいのでより管理コストはシビアに検討、計画しなくてはなりません。

私が今回の依頼で第一に心がけた事はいかにエレベーターについて分かりやすく関心を持ってもらえるような説明と視覚的に表現するその資料ツール作成でした。

普段のエレベーター利用では乗場とかご内でしか認識できませんが、リニューアル工事で一番重要な箇所は、普段立ち入り禁止の屋上エレベーター機械室だったり、かごが昇降する下から上までの筒状の昇降路と地下のピット内の各機器類です。

その機器がどういった状況で、なぜこれらを更新しなければならなくてそれにはどうしてもこれだけの費用と期間が必要なので皆さんが一丸となって検討に当たる必要性がありますとご理解してもらえるかにかかっているのです。

皆さん平日は仕事を持たれていてマンションの管理なんてする余裕がない。その為に高い管理費を管理会社に支払っているのだからちゃんとやってくれているのだろう。輪番制で偶々割り当てられたけど、どうせ専門的な事は素人では判断できないし自分以外の誰かがなんとかやってくれるだろう・・・ではゆくゆくは高い代償を払ってしまう事になるのではないでしょうか?

最近では第3者管理者方式といって管理会社にすべての決定権を委ねて管理組合の輪番制理事長、理事役員成り手不足解消が図れるとあって新築時から管理規約に盛り込まれたマンションや、管理会社の勧めで規約変更、第3者管理者方式採用をされる管理組合が増えているニュースを聞きます。

利益相反行為、自己発注行為等の問題から国土交通省も問題視している動きがある中、今一度慎重にマンション管理の今後の在り方について考えていく分岐点に差し掛かっているのではと感じています。

いきなり、建物全体からではなくまずはエレベーター設備から始めてみませんか?

ご相談は無料です。
お気軽にご連絡ください。

お問い合わせ、相談はこちらから