都市部投資用マンションの管理会社リプレイスへの相談経緯
コロナが明けて、市内不動産の動きが活発化しています。都心部の新築マンションなんて「億」は当たり前になってきています。
中古マンションにしても10年前の購入価格を上回ってる物件も多いので物件売買の所有者変更が目まぐるしく、今の時期はその度に変更契約と新年度切り替えの手続きで、この業界では例年繁忙期となっています。
今回は、都心部のワンルーム分譲マンションで賃貸比率が8割を超えている投資型マンションを購入され、入居したところ、管理会社に対して疑問・不信感を抱き、あるマンション管理事務所団体を通じてエレベーター管理の相談を受けた事例を紹介します。
マンション概要
- 大阪市内
- 築27年
- 10階
- 45戸
- ワンルームマンション
理事長と監事以外はほとんどが賃貸となっていて、通常年に数回される理事会も開催されず、年1回の定期総会のみ理事長、監事、管理会社フロント担当者のみ参加する程度で、その他は委任状、議決権行使書で総会の成立要件を満たして、実施・更新している状況。
この物件が特別ではなく、投資用マンション管理運営はほとんどがこういった実態なので、業界で話題に上がっている第3者管理方式を大手管理会社中心に拡充している現実があります。
必然的にマンション管理に、無関心、不参加、管理会社に丸投げノーチェックで更新されていくのですが、この状況に違和感から危機感を感じ取り、マンション管理事務所に相談されたのが事の発端です。
管理会社契約エレベーターの保守管理の実態
・1997年製造設置、ロープ式エレベーター
保守管理:2004年から独立系保守 フルメンテナンス契約 2か月に1回点検
いつものように現地訪問、理事長様にヒアリングと現地機器の調査確認から始めました。
少し前に、乗場押釦の表面カバーがひび割れていて表示が見えにくくなっているので、交換対応を管理会社に要請しても1~2か月音沙汰もなく、督促すると「フルメンテナンス契約外となるので別途見積もりとなる。1か所〇万円。」の返答。
確かにひび割れの原因が経年劣化か悪戯化かは不明だが、表面のプラスチックカバーを取り替えるだけで〇万円!?再検討を要請したところ「次回のエレベーター保守会社の定期点検で現状詳細調査して返答します。」との事だった。
後日、定期点検後に管理会社から連絡があり、「今回は(保守会社が)なんとか契約範囲内で出来るそうです。」・・・・・
恐らく、管理会社担当は一度もこのエレベーター乗場押釦の状況確認のために現場訪問していないし、ただ単に状況を保守会社に伝えて「金額高いと管理組合からクレームになるから、なんとか無償で取り替えてほしい。」と電話かメールでやりとりしたのでしょう。
機器の状態としては、ワンルームという事もあって若い世代が多く、10停止なので利用頻度は多めでしたが、機械的な部分は手入れ、交換されている印象でした。
設置メーカーのホームページで部品供給停止状況を確認すると「2026年に供給が終了する」と2022年に公表されていましたが、今までそういった報告は管理会社からも無かったとの事。
2年後の供給期限に備えて、エレベータリニューアル工事を検討しなければならない現状を伝えましたが、当然具体的にこれからどうすればいいのだろうと頭を抱えられた様子でした。
エレベーターフルメンテナンス契約切り替え問題点の解決
管理会社変更(リプレイス)に向けてマンション管理事務所と打ち合わせを重ねて、エレベーターとその他の設備関係で機械式駐車場や雑排水洗浄、貯水槽清掃、消防設備点検、機械警備の専門業者へそれぞれ相見積もりを取得し、比較検討し、エレベーター保守費用に関しては約15%ダウンの目途が立ちましたが、大きな問題があります。
それは、このエレベーターが竣工から27年間フルメンテナンス契約であり、保守会社を変更するのは現状の状態で引き継いでいかなければなりませんが、基本的に15年を経過した機器のフルメンテナンス契約継続を承諾する保守会社はありません。
そこで、まず現保守会社の保守を開始してからの過去の部品交換履歴を取得する事にしました。
管理会社にその旨を打診要請し、程なく保守会社作成の部品交換履歴実績表が提出されました。
ですが、定期的に交換が実施されてるのは、この20年間で定期検査項目に該当する各非常用のバッテリーとブレーキ系の制御リレーとギアオイル、所々のドアスイッチ、乗場操作盤の押釦、ドア関係のローラー、10年周期のメインロープ1度でした。
必要最低限であり、現実的には標準的な交換履歴ですが、半導体関係の制御基板類が全くありませんでした。
部品交換の機器、部材や取替時期については保守会社にすべてお任せで、故障が無く安全を担保するのがフルメンテナンス契約ですので、今まで特に不具合がなかった事からは問題はありません。
しかし、エレベーターの特に制御基板類に関しては25年を経過した頃から、不具合が発生しだします。
しかも高額であり、ここ最近は調達納期も数か月~1年と高経年機器のフルメンテナンス継続はとてもリスクが高い事から部品代は別となるPOG契約が条件となる見積りしか出されません。
エレベーター保守業界では高経年フルメンテナンス契約の切り替えは、リニューアル工事を機会に切り替えする以外、ほとんどの場合ないのが実情です。
意を決して管理会社にコンサルタントの立場として、制御基板関係数点の契約期間内の履行を求める要請をする事にしました。
具体的に該当機種の、時期的に交換が必要であろう基盤の特定をし、それぞれについて今後の交換計画はどうなっているのか?について中長期修繕計画の提出を求めたところ、出されたのは4年先の2028年までの今まで実施された範囲のバッテリー、制御リレー、ギアオイルでした。
しかも、2026年に部品供給停止が公表されていますが、それらについては触れられていませんし、何となくやっつけで、とりあえず作成した感じに受け取られました。
半導体制御基板関係について質問しても、「エレベーター保守会社に伝えてもこの計画しか出してこなかった、要請しているので返答待ち、専門ではないのでそこまでは分からない・・・。」を繰り返すのみ・・・。もう我慢の限界に達してしまいました。
「今現在まで交換しなかった理由とこれからの計画でも交換予定としない理由、根拠について期限内に返答ください。返答ない場合、この事実を何らかの方法で世間に公表します。」
少し、強引すぎたかなと躊躇いもしましたが、今までの交渉で管理会社の態度から何とかして時間を稼いで有耶無耶にしようとする意図が感じられた為、致し方ありませんでした。
期限までの間、2回ほど進捗含めた督促確認連絡の末、期限日当日に「ご指摘の基盤についてすべて新品に交換します。」と返答メールが来ました。
専門知識による具体的な報告の要求がエレベーターメンテナンスに必要
こういった例は、エレベーターに限った話ではありません。
現状は故障やなんらかのトラブルが偶々なかったから通常扱いされていますが、契約の履行状況の確認なので管理報告は当然の権利であり、マンション管理適正化法では管理委託契約上も契約更新の重要事項説明で委託者からの報告義務があるのです。
エレベーターが一番のきっかけとなり、リプレイスが決定となり数か月後に新会社・新体制で管理業務がスタートします。
特に今回は理事会、定期総会が機能していない投資型マンションの極端な例かもしれませんが、ベースとなってる問題は無関心、無責任⇒丸投げです。
後で聞きましたが、投資型マンションの管理会社担当物件数は一人30数件とか!?
これでは、一つ一つのマンションの設備や住民の意見の対応なんてとても無理でしょう。
現に、今回のフロント担当者もエレベーターの保守契約内容についてきちんと把握されていませんでした。
現実問題、契約形態の状況から過去の履歴、計画、具体的な指摘、報告要請等とても一般の管理組合の方では難しいでしょう。
あまり管理会社をスーパーマンのように何でも任せておけばちゃんとやってくれていると思わないようにして、専門性の高い重要な問題点の検討は管理組合が主体となって専門家に任せながら二人三脚で解決していきませか・・・?
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