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補助金

【補助金の要件】エレベーター防災対策改修(耐震対策)

2024年4月27日

2024 04 27
パソコンの画面を前にして、図面に書き込みを行いながらミーティングしている

補助金の対象となるエレベーター改修工事の要件

エレベーター改修工事の補助金をもらうためには、下記の5つの工事内容について適合させなければなりません。

1,地震時管制運転装置の設置

地震による閉じ込めを防止する。
本震(S波)の前に到達する初期微動(P波)を感知し、エレベーターを最寄り階に自動的に着床・停止させる装置を設置する。

2,主要機器の耐震補強措置

滑車からのロープのはずれ防止、昇降路突出物への絡まり及び駆動装置や制御機器の転倒・移動を防ぐ。

3,戸開走行保護装置の設置

駆動装置又は制御機器に異常発生し、かごの停止位置が著しく移動した場合やかご及び乗場のすべての出入口の扉が閉じる前に、かごが昇降した場合に自動的にかごを停止し人の挟まれを防止する。

4,釣合い重りの脱落防止措置

昇降路内の釣合い重りが地震時に錘枠から脱落する事を防止する対策を行う。

5,主要な支持部分の耐震化

レールや支持梁など、エレベーター重量を支える部分が地震に対して構造耐力上安全性を確保する。(安全な強度とする)

以上の対象工事に係る費用の23%で、且つ、1台につき上限額が950~218万5千円が要件となります。

今年から限度額が622万円から950万円に国土交通省では拡充されましたが、実際での地方自治体ではそこまでの額は設定されていません。自治体によってそれぞれ金額はバラツキがあるので、エレベーター設置場所管轄の行政窓口での確認が必要です。

その他に平成26年3月31日以前に建設された建物である事、延床面積が1000㎡以上の共同住宅である事、長期修繕計画が作成されている事、構造躯体が地震に対して安全な構造の建築物である事等の建物に関する要件も満たさなければなりません。

最後に、国土交通省や補助事業実施する地方自治体のホームページにも記載されていない必要要件として、竣工当時の昇降機確認申請副本があります。

5つの仕様は現行の建築基準法施工例の規定に適合させる事となるので、上記2、4,5の耐震対策、補強工事で建設設計時の耐震基準で設計された荷重計算、強度計算、耐震設計データ等の構造設計データを現行法の耐震基準に照らし合わせて、基準をクリアさせるように補強箇所、補強方法の設計検討が必要だからです。

当時の鋼材の規格や、地震力に対して伸縮、曲げのモーメント等の物理的な計算式が記載されていますが、私たちが見てもx、y、z等アルファベットの記号のような数式が数十ページに渡って記載されていますので、製造設置会社か、よほどの人材の揃った設計部署を持つエレベーター会社でないと対応は難しいでしょう。

ある管理組合からの相談で補助金を使ってリニューアル工事をする事となったので、上記要件の確認をしたところ、昇降機確認申請副本が見当たらず申請を断念した経緯もありました。

必要要件工事(2,4,5)エレベーター機器の耐震性強化

【主要機器の耐震補強措置】

エレベーター機器は大きく機械室と昇降路に分けられます。

機械室には最も重量のある巻上機とすべての司令塔である制御盤が設置されていて、この主要機器が地震によって転倒したり、位置がズレてしまったりしないように、ワイヤーで制御盤の天板と機械室天井に連結したり、床の構造体であるマシンビームに巻上機を強固に取り付けるように連結金具で固定します。

巻上機の滑車にはロープが掛かっていますが、そのロープが地震の揺れによってロープが掛かっている溝から外れないように外れ止めのストッパーを溝とロープを挟み込んだ位置に取り付けます。

かごと錘が昇降する昇降路ですが、かご~巻上機~おもりと連結しているワイヤーロープと機械室内の制御盤とかごと繋がっている移動ケーブルがエレベーター昇降時に伴って移動します。

エレベーター昇降時に地震時の揺れにより、そのロープ・ケーブルが昇降路内他の周辺機器やレールブラケット等に接触、引っかかってしまわないように、ケーブル軌道上に沿うように金網・保護線や中間地点で配線ボックス、振れ止めを各所に取り付けます。

【釣合い重りの脱落防止措置】

かごが1階に停止している時、釣合い重りは最上階付近に位置しています。

過去の地震で、大きな揺れによりその釣合い重りのケースに内蔵されている重り板が零れ落ち、かご上部に落下する事故が発生しました。

非常に大きなリスクとなるので、その重りが相当な揺れに対しても釣合い重りのケースから脱落しないようにするのが釣合い重りの脱落防止措置です。

よくあるマンションのエレベーターでは9人乗りが主流ですが、積載は600kgになり、相対する釣合い重りはかご自重と合わせて800~1000kgになります。

幾重にも積み重なるように重り板がカウンタケース内に収まっていますが、地震の揺れによりケース内から脱却、落下しないように枠に連結させる抑え金具。重り板内に通しボルトを施します。

【主要な支持部分の耐震化】

昇降路内のかごと釣合い重りのレールに対して地震による支持材の強度増しとかご、釣合い重りとレールを繋いでいるガイドシューの脱レール防止措置を施します。

レールそのものの強度とレールと躯体を接合してるレールブラケットの強度、中間ビームがある場合はそのビームの強度を増強する必要があります。

レールそのものに関しては先の昇降機確認申請副本のレール鋼材強度計算データや構造規格を検証して現行基準に照らし合わせる必要がありますが、1本1本繋ぎ合わせているレール目板の交換が具体策となります。

レール自体の強度不足となるとレールをすべて交換しなければならず、かなりの大工事となりますが、今までの経験上、レール交換まで至ったことはありません。

現状のレールブラケットに取付ピッチを詰めて、ブラケットを追加する事で地震による躯体とレールの脱却損壊を防ぎます。

エレベーターリニューアルに補助金を適応させるためには・・・

現行基準に適合させるにはこういった対策工事実施が計算、理論上でも基準を満たしているかをあらゆる尺度で立証、証明しなくてはなりません。
それには使用する鋼材、部材に関して(レール、レールブラケット、中間ビーム、マシンビーム、かご本体、釣合い重り本体)のミルシート(規格、素材、品質データの称号)が必要になりますが、これには限られた施工会社しか対応ができない為、補助申請先との協議が必要だと考えています。

また、年度内での施工完了について確認しなければならないハードルがありますが、すべて条件がクリアになればこの補助金制度を活用するメリットは大きいので検討してみるのもいいかもしれません。

でもその前に、この複雑で難解な適応条件についての検討検証は一般の方には荷が重すぎます。
ぜひエレベーター専門のコンサルタントにご相談ください。

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