制御リニューアルと制御盤リニューアル(巻残し)
エレベーターリニューアル工事でまず、大きく4つに分類されるのが、
- 完全撤去新設
- 準撤去新設
- 制御リニューアル
- 制御盤リニューアル(巻上機残し=巻残し)
一般的に一番多いのは、制御リニューアルで制御盤と巻上機を交換する仕様です。部品供給終了の基板や半導体ユニットを制御盤一式交換するなら、同じ時期の巻上機もセットで交換する方が効率的、コスト的にもいいので、一番多い仕様内容です。30~35年経過のエレベーターがリニューアル実施時期で一番多いのも要因です。
その次に多いのが制御盤リニューアル(業界では巻残し)です。主にメーカー系保守会社が20~30年経過のエレベーターに対して推奨提案するパターンですが、制御盤等電機品だけを交換し、動力部である巻上機は既存流用するので、工事金額は低く抑えられますが、いずれ少なくとも20年後くらいには既存流用で残した巻上機と2回目の制御盤交換工事の提案がなされ、検討を迫られる事になります。
独立系保守会社では技術的な対応力から積極的には推奨提案はしない傾向です。
名前が似ているので同じ内容と錯覚、勘違いされたり、メーカー系と独立系の工事見積を比較検討している際に、金額があまり大差ない、独立系の方が高い場合は、この巻上機が工事内容に入っているかを確認してください。
単純に交換する部位が多い、工事内容の多い制御リニューアルの方が工期が長く、制御盤と電気廻りのみの交換である制御盤リニューアルでは短い工期なのは当然なのですが、私見ですがそれほど大きな工期差はないと感じています。
今回は、この2つのリニューアル仕様の工程について詳しく解説していきたいと思います。
制御リニューアル工事の工程
工事項目
・制御盤
・巻上機、電動機
・調速機、張車
・主ロープ、調速機ロープ
・制御ケーブル
・着床装置
・かご上操作ボックス
・塔内リミットスイッチ
・ドアモーター、ドアコントローラー
・ガイドシュー
・かご内操作盤
・乗場操作盤
・インターホン
以上ですが、エレベーターの制御に関わるほぼすべてが交換対象になっています。
逆に既存流用となるのは、かご、レール、乗場の三方枠、ドアパネル、敷居とドア廻りとなるのですが、ドア関連機器については現状の機器の状態によっての判断でオプション扱いにしている保守会社が大半ですので、契約先の保守会社に扉周りの状態をヒアリングしリニューアル工事にオプションで組み込むかを打合せ、確認する必要があります。
その場合のおおよその標準的な工程ですが、7~10日間が一般的です。
着工初日に大型トラック2台分の材料を搬入しますが、屋上の機械室への楊重作業は解体前のエレベーターで1階から最上階まで積載し、最上乗場から屋上機械室まで人力で運び入れるか、レッカー車を建物に横付けして一気に屋上機械室扉まで運び入れるかで作業時間が変わりますが、いずれにしても初日1日目で既存エレベーター解体撤去、新規制御盤、巻上機の搬入作業まで、その後はその工事業者の手順、進捗状況によってまちまちですが、新規制御盤と巻上機を据付、結線作業で1日目を終了します。
2日目、3日目で巻上機にロープを掛けてかごに吊ったり、主な配線工事と昇降路内の制御ケーブル、かご上の各種機器取替、かご内操作盤取替とドアユニット、ドアモーター取替まで、主要な機器の据付が完了となります。
4、5日目で機械室内の機器、昇降路内機器の配線、結線関係を終了させ、各階の乗場操作盤の取替と各扉関係調整とオプションのドア関連部品(ドアシュー、ドアハンガーローラー、ドアワイヤー等)の細かい部品について取替作業。
6,7日目では今までに解体撤去した廃材品の搬出作業と各部各所の調整作業となります。一般的に据付作業が終わればエレベーターは動き出すので完了ではないのか?と思われますが、実はこの調整作業が最も重要な作業工程なのです。
据付ただけの、エレベーターは乗り心地も悪く、振動やあちこちから走行異音がしたり、きちんとした位置に着床しなかったりドアの開閉もぎこちなく、急に閉まったりしてとても人が乗れる状態ではないので、ベテランの調整員がその動き、騒音、振動をくまなくチェックし引渡しに向けて快適で安全な満足度の高い仕上がりとなるように調整を施します。
私の経験上、この調整作業に十分な期間が取れなかったり、調整作業が荒かったりしたエレベーターは、かなり高い確率で引渡し後すぐに不具合を発生させ、顧客満足度を下げ、信用失墜させてしまいますので、最も重要な期間であると私は認識しています。
【標準工程表】
制御盤リニューアル(巻残し)の工程
工事項目
・制御盤
・制御ケーブル
・着床装置
・かご上操作ボックス
・かご内操作盤
・乗場操作盤
・インターホン
先の制御リニューアルと比べて、一番の主要機器であり重量物である巻上機がない分、期間も短く、着工初日の搬入も大型トラック1台分なので新規制御盤を屋上機械室に運び入れて、旧制御盤を解体撤去、据付して配線、結線作業でほぼ半日、その後制御ケーブル、昇降路内機器の取り付け、かご内、乗場操作盤取替で初日合わせて約3日間で据付完了。
その後、調整作業で1、2日間、トータル5日間が一般的な工事期間です。
メーカー系施工会社では3日間で完了するケースもありますので、独立系施工会社との違い、独立系施工会社でも1日で完了すると謳われている会社がありますが、その実績、細かい工程作業内容をよくよくヒアリングした上で確認判断する事をお勧めします。
エレベーターリニューアル工事工程の捉え方
2つの工事仕様による一般的な工事工程について紹介しましたが、あらゆる現場での工事はその現場によって細かい作業内容、作業環境、作業員のスキル、配置状況等によって千差万別です。
工事発注後の工程打合せでは、提出された工程表を受け取るだけであまり確認しなかったり、説明を受けても、ただ工程表に書いてある事を棒読みされただけで終わったりして、いざ着工してから想定外のアクシデントや聞き違い、認識のズレからトラブルとなった現場を数多く見てきました。
人生で一度経験するかしないかのエレベーターリニューアル工事で滞りなく、ミスなく工程通り、満足のいく引き渡しが迎えるのはやはり、一般の管理組合様や賃貸オーナー様では難しいでしょう。
エレベーターマネージメントでは業者選定後の工事監理の業務委託として1台35万円(税別)で契約後、着工までの仮設計画打合せ、住民工事説明会、その他工事に関する住民への告知活動、搬入計画の事前経路確認、工事中の作業スペースと廃材置き場等の間仕切設置の確認等、施工会社と管理組合、賃貸オーナー様、入居者様にとってより安全に満足度の高い効率的な工程施工計画で工事進行を担っていきますのでご関心の折はお問い合わせください。
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