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リニューアル 相談事例

特殊・特注エレベーターのリニューアル工事検討の注意点

2024年10月27日

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特殊仕様のオーダー型エレベーターは保守対応業者が限定

国内設置エレベーターの大半は、ロープ式、油圧式のいずれかで構成され、ロープ式では機械室があるタイプ、ないタイプに分かれてこの20年に設置されているエレベーターはほぼ、機械室がないタイプのロープ式エレベーターとなっています。今、この機械室のあるタイプのエレベーターが築30年以上経過し、メーカー保守部品の供給を停止してきているのでメーカー系保守、独立系保守会社が精力的に営業展開し、現在において大きな市場を確立している状況です。

1年ほど前からメーカー数社がその機械室ありエレベーターリニューアルから、機械室なしエレベーターの部品供給停止を公表しているので、現在ではその製品開発対応に追いついていない大手独立系保守会社が相見積もりに参加する事ができず、メーカー系保守会社の占有率が高い状況となっています。

企業規模のそれ程大きくない中小の独立保守会社では数社、見積対応可能も聞かれますので今後は、他の独立系保守会社も追随し、次のマーケットとなる機械室なしタイプのエレベーターリニューアルの市場を構成する事になるのは間違いありません。

しかしながら、本日紹介するタイプのエレベーターは、独立系保守会社では少なくても現在は保守、リニューアル共に見積対応できない、あるいは、特別ないきさつがあってメーカー以外の保守会社が点検契約しているが、メーカー系でも他の保守会社では保守管理対応が難しい事が想定されるいわゆる、特殊、特別なエレベーターについて紹介したいと思います。

  • 高速エレベーター(高層エレベーター*停止階床数15階以上

国内のエレベーターではJIS規格に基づいて乗用エレベーターの積載重量、人数に応じたかごの大きさや速度が全メーカー共通化されています。エレベーターメーカーはその規格を元に大量生産し市場に投入しているので国内設置の建物の大きな割合で構成されています。

マンションでは、6人乗り:1050㎜×1150mm、9人乗り:1050×1520mmのかごの大きさが規格されていて、速度が分速 45m/min、60m/min、90m/min、105m/minに分類されます。

ほぼ、建物高さとして30m以下、階床数15か所停止までを条件として設計、設置されていてほとんどの中低層マンションは該当しているかと思います。

この15年ほど前から、東京一極集中化傾向から建設技術の向上も相まって、都心部中心に再開発化が進んで20階以上の高層マンション、タワーマンションが増加しています。

2,3年前にコロナ禍影響で設置台数は少し鈍化しましたが、昨年から増加傾向になっています。

最近になって、そういったタワーマンションの管理組合様から長期修繕計画のエレベーター修繕計画のご相談を受ける事が多くなりました。

まだ、メーカーからの部品供給停止の公表はないのでリニューアルの時期であったり、工事金額について問い合わせてもはっきりしない現状での相談であったり、保守金額についても見直しをしたいが見積可能なエレベーター保守会社について教えてほしい等、先を見据えた内容から直近の問題についてなのですが、現時点では設置しているメーカー系保守会社以外の保守会社は対応できないのが現状です。

上記のJIS規格以上の速度、停止階床数になると、構成する制御盤、巻上機等のスペックが全く別構造になり、ハイレベルなスペックとなる上に保守管理する上で必要な技術情報が一般化されていないのが理由です。

  • リニア式

モーターに電気を流し、その回転する力を歯車や直接滑車に回転運動でロープに伝えるのが、ロープ式エレベーターの基本原理ですが、リニア式エレベーターは全く違う構造でエレベーターを稼働させるタイプになります。

モーターの回転運動ではなく、磁力の反発する力でかごを昇降させる構造となっているので、巻上機、モーターといった動力機器を持たないタイプになります。この構造は1社しか製造設置されていないので、制御リニューアル工事については、製造設置のメーカー系保守会社のみしか対応できません。他の保守会社での対応となると全部品を撤去して新設する事になるのでかなりの規模で高額工事となります。

  • フラットベルト式

一般的なロープ式のロープは鉄のワイヤーロープを採用していますが、ベルト構造でかごと錘を吊って駆動するタイプです。

表面は特殊なゴムで覆われており、中に電気信号を送電できる特殊なコード(?)が内蔵されていて、ベルトの劣化判別がその電気信号によって可能となる機能が備わっています。特殊な判定機が必要なのと、鉄製のワイヤーロープより高額設定です。上記同様、製造設置のメーカー系保守会社のみしか対応できません。他の保守会社での対応となると全部品を撤去して新設する事になるのでかなりの規模で高額工事となります。

  • ベースメント式

通常の機械室ありのロープ式エレベーターでは、屋上、最上階にエレベーター機械室がありますが、建物の構造設計上、建物上部にエレベーター機器の大きな荷重をかけられない場合、最下階に機械室を設けて特殊なローピングで駆動するタイプになります。

マンションでは団地型公共住宅や稀に大手デベロッパー系の団地型マンションに設置されています。

ロープの駆動張力の方向転換を機械室内、昇降路に必要なので至る箇所に返し車となる滑車が設置されています。

メーカー系以外の保守会社でも数社対応可能な独立系保守会社は存在しますが限定的です。

  • 斜行エレベーター

よく地名住所に〇〇台とかつく、丘陵地の大規模マンションで20~25年に製造設置されたエレベーターです。

昇降が通常と違い上下ではなく、その名の通り斜めに移動する、イメージとしてはケーブルカーに近いと言えます。

かご内については、一般的なエレベーターと同じですが、昇降路内はケーブルカーのようにレールにローラーが乗って、最上部の巻上機がロープを引っ張ったり錘に引っ張られたりする構造なので、かなりエレベーターとはかけ離れた機器の印象です。

数社の大手メーカーが製造設置して、制御盤の基板や巻上機モーター含めて生産終了しているので、経年劣化の問題含めて改修する時期に来ていますが、独立系保守会社では対応できない状況です。

最近もこのエレベーターのリニューアル工事の相談を受けています。

特殊なエレベーターの高額工事検討には第3者の意見が必要

今回紹介のエレベーターは過去に私が相談を受けて、検討、問題解決に向けて取り組んだ実例を元にしています。

1社しか見積をとれないので高いか安いか(ほぼ高い)判断がつかないので管理組合として決議が通らないといった相談が多いのですが、まず出された見積の内容の精査検証から始めます。

出来るだけ細かい内訳から、必要な交換箇所とそうではなさそうな箇所に分類して業者に質疑、ヒアリングを重ねて価格の妥当性を探り、中には交換必要な部品でも特殊な部品と一般的な部品も分類し、比較可能な部品単価ならその内訳について問い合わせをかけるなど、かなり専門的で緻密な作業になりますが、少しでも無駄を省きコストダウンになる、あるいは価格の妥当性を明確にして合意形成をはかるサポートができるのではと思います。見積比較が出来なく価格の正当性、妥当性が上手く理解、説明ができない管理組合の関係者様、賃貸オーナー様、管理会社様は一度相談、お問い合わせください。

エレベーターのお困り事ならお気軽にお問い合わせください。

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