
主体は管理組合理事会で審議、決議する事が重要
ここ最近のお問い合わせに、任期中の理事長、役員の方からもですが、前期役員元理事長や、元役員の方からもご相談を受ける事が多くなりました。
輪番制を採用している管理組合が多いので、1,2年任期でやっとマンション管理について少し慣れてきた、把握できてきたところで任期終了となり、次の理事役員の方に交代、引き継ぎとなるのでどうしても継続性を保つことが難しい構造となっています。
引退した元理事役員の方は、以前経験したので引退後の理事会運営に興味関心を持って回覧された理事会議事録を読まれるのでしょう。
そういった中で、エレベーターリニューアル工事の理事会検討経緯や総会議案について疑問を持たれるケースが多いようです。
その場合、現理事長や理事役員の質問、問合せをされますが、あまり把握されていないので、明確に返答できず“管理会社に任せているから”や、“見積も管理会社が保管しているから詳しい内訳等は分からない”といった返答に対し不満を持たれるケースです。
昔と違ってこれだけネット社会となり、あらゆる業界の相場についても概要程度なら検索される時代なので、あまりにかけ離れた金額ならば違和感を覚えてしまって、“今の理事会はどうなっているのか?”と段々と不信感を募らせてしまい、そのままの状況で定期総会、臨時総会で決議になって実際、紛糾してしまう話を数件聞くことがありました。
マンション管理の特に、修繕計画については5年、10年の計画で審議検討する事項が多いので新しい役員に入れ替わったら、その議案の引継ぎはもちろん、ある程度の周辺知識についても習得する必要があるのですが、エレベーターについては一般的にも情報を得る事が難しいのと、管理会社もエレベーターリニューアル工事の細かい専門的知識について新理事のメンバーに十分に引き継ぎ説明する事が出来ないのが現状です。
そういった事を補うのが、本来マンション管理士の役割だと思うのですが、多くのマンション管理士も元管理会社の経験者が大半なので、エレベーターについては管理会社フロントと専門知識に関しては大差なかったりします。
ここで、重要なのはエレベーターに限らず、特に高額出費が伴う事案については理事会主体で進行していくといった、管理組合理事役員皆様の意識が大切です。
大規模修繕工事では、10数年に一度に修繕コンサルタントを採用して工事の範囲、仕様を決めて、修繕工事見積を業者から徴収して選定、その後の工事監理しているように、エレベーター工事も金額的には大規模修繕工事に匹敵するくらいの規模になるので、コンサルタントを入れて意見を聞き、提案を受け、管理組合と共通認識を保ちながら検討を進めていく事が必要だと思います。
相談事例1
管理会社の系列会社が元請けで決議されたエレベーターリニューアル工事
そのマンションの管理を受託している管理会社が大規模修繕工事や、設備関係工事をその系列の専門業者に下請けに出して管理組合に提案されるケースです。
その建物を管理している会社の系列なのだから、よく把握しているはずだ。安心できる。と理事会で審議が進み、総会決議の段で建設系の会社勤務の区分所有者から建設業法について質問、指摘があがり明確に返答対応ができずに保留となった。
管理会社主導で、業者選定や業者招致による説明会を理事会と合わせて数回実施したりと、検討に必要なステップを踏んでいるのもかかわらず、土壇場で想定外の確認不足が問題となってしまった例です。
相談事例2
検討経緯が不明瞭なエレベーターリニューアル工事決議
今度、エレベーターリニューアル工事決議の議案の総会があり、議案書についてあるメーカー系エレベーター会社による発注の理事会審議経緯に、詳細な検討結果に至る内容の記載がない。
ネット検索で相場を調べたが、明らかに工事仕様にして割高ではないか?
一台しかないエレベーターで工事期間が30日間で、その間全く利用できないが、もっと工事仕様を検証して工事期間を短縮した内容はできないのか?
管理会社がエレベーター業者への見積徴収から選定まで主体となって、最終決定しようとしている様に見える。どうしたらよいか?
相談事例3
理事会で、管理会社が現在エレベーター保守契約を管理会社経由で、下請けに出しているメーカー系保守会社が提案しているリニューアル工事見積で検討を進めているが、見積内容、仕様、内訳、必要性について理解できない。そのメーカー系保守会社に理事会に参加してもらい説明してもらったが、専門用語が多く特に耐震対策についての各グレードの違い、必要性など回答が満足できる内容ではない。部品供給期限の問題があるので、決議を急がなければならないと臨時総会招集を迫られているがこの状態で、しかも十分な相見積もりもなく決定してしまっていいのか?
自らの資産価値向上は自らの合意形成によって
あらゆるモノの値段が高騰していますが、それに伴いマンションの修繕積立金も値上げ、管理費値上げも必要になってきています。
エレベーターの保守費用の値上げ、管理会社から管理委託費の値上げも当然多くなってきているのではと思います。
今までと違い、一つ一つの委託費や修繕費についても他人にお任せではなく、じっくり自分たちで検討、検証していかなければ20年後、30年後管理に関する予算が枯渇、破綻する事になります。そうならない為にも自らが主体性を持って、管理組合運営を取り仕切っていかなければならない認識を持っていただければと思います。その為の一つとしてエレベーターに関する事のお手伝いをさせてください。