
20数年前に1回目実施、2回目のエレベーターリニューアル工事検討
日本経済高度成長期の1970年代はちょうど大阪万博が吹田市千里の万博公園で開催された年代です。今までにない建設ラッシュで数多くの大規模マンションが建設されました。団地型、単棟型含め多くの共同住宅が現在も存在していて居住されていますが、複数個所の建物経年劣化が進行しており修繕工事計画が待ったなしの状況となっています。
大規模修繕工事含め、給排水、各戸共用部の窓枠サッシ、外構関係等に加えエレベーターの部品供給期限問題から2回目のリニューアル工事を計画に盛り込まなくてはなりません。
1回目のリニューアル工事はメーカー系保守会社により、竣工から30年そこそこで実施されたのがほとんどだと思います。その頃は部品供給終了といった理由ではなく、各基板、電機部品の耐用年数からまとめての一式交換の推奨提案ではないかと思いますが、当時独立系保守会社といった存在がなかったので他に選択肢がないまま、安全にかかわる事を最優先させる予防保全の観点で実施されたケースが多かったのではないかと推測されます。
それから20年が経過し、電気関係、基板が数年後に生産停止となり保守保全継続にリニューアル工事の検討が再度必要といった状況となります。
まずは、前回のリニューアル工事仕様の確認が必要ですが、おそらくほとんどの場合が制御盤と電動機、操作盤、制御ケーブル関係と電気スイッチ関係に一式交換といった内容だと思われます。
動力部である巻上機はその当時は既存流用され、現在までの50数年間稼働し続けているので2回目となる今回のリニューアル工事仕様としては巻上機を含む制御リニューアル工事が必須となります。
20年前とは時代背景、市場構成、市場価格がかなり違っていて前回よりも巻上機を加える分、当然価格も大幅に増額となるので1回目の実績データはあまり参考になりません。
2回目となるエレベーターリニューアル工事ならではの注意点もあるので、今回はその点も踏まえて紹介したいと思います。
エレベーターリニューアル工事仕様の検討
前述したとおり、1回目の仕様に加えて巻上機も交換対象に加えなければなりませんので、
制御盤
巻上機、電動機
調速機、張車
主ロープ、調速機ロープ
制御ケーブル
着床装置
かご上操作ボックス
塔内リミットスイッチ
ドアマシン、ドアマシン
かごガイドシュー、カウンターガイドシュー
かご内操作盤
乗場操作盤
インターホン
が基本仕様となります。
1回目のリニューアル工事であれば必要最低限の仕様であり今後の保守保全に対処できる仕様ですが、全体機器が50年経過したエレベーターとなると、各現場に応じた追加仕様の検討が必要となるケースがあります。
その最も、可能性の高い、かつ金額のインパクトの強い仕様としてドア関係が挙げられます。
ドア機構 ドアヘッダー ドア駆動連結部 図解↓

先の基本仕様にはドア関係はドアモーター、ドアマシンしか含まれていません。
いわゆる、ドアを開閉させる動力部については交換されますが、そのドアを動かす連結部分は対象になっていません。
自動車で言うとエンジンは交換するが、その力を伝えるトランスミッションは古いままといったイメージです。
部品構成としては、ドアパネル、ローラー、ドアレール、連結ドアワイヤー、ドアベルト、ドアアーム等、機械的な部品がほとんどとなります。
この部材が、各乗場扉箇所とかご扉の個数が必要となるので例えば7階建てであれば、8か所必要となり、場合によっては約300~400万円増額となるので大きな差額となります。
巻上機と同様に、この箇所も前回の工事では既存流用され50数年経過しているので、現状の劣化状態と市場からの部品調達環境によって交換対象とするかの判断となります。
この点については、各エレベーター保守会社に強く確認を要請する事を推奨します。
2点目としては、かご本体、かごパネルの交換についてです。メーカー系保守会社の提案では、かごの意匠工事としてかご内室のパネルを交換するパッケージがあります。パネルのみなのでかごのフレーム(骨組)については既存流用なので、確認申請は必要ありません。独立系保守会社の提案は見た名の意匠工事ではパネルも流用してその表面にダイノックシートを貼る提案をされます。
シートの色柄種類もかなり多数あり、施工技術も高いので見た感じは新規パネル取替と大差ありません。
但し、2回目のリニューアル工事である50数年経過したエレベーターとなると、使い続けていた経年劣化から使用環境等でパネルの凹み、歪み、腐食から、走行時の震動、異音、見た目からかごパネルあるいはかご本体も交換する検討をされる事を推奨します。
最後に、このリニューアル工事を節目に保守契約の見直しの検討される事をお勧めします。
例えば、今までは50年間フルメンテナンスで契約継続してきましたが、今後20年後も今回同様にリニューアルの時期に来れば3回目のリニューアルとなります。その時は建物も70年経過している事になり、建物全体の保全状況がどうなっているか予想が難しいと思われます。
この機会にフルメンテナンス契約よりも低額なPOG契約に切り替えて都度都度の点検報告から部品見積検討を必要に応じて細かく検討するのも一つの選択肢と思います。
しかしながら、昨今の資材コスト高騰の状況から、もし現在のフルメンテナンス契約の金額が一般的相場から安いのであれば、従来の契約継続がベストと思われます。ただ、これもある保守会社では保守料金の一律値上げの要望、通知に踏み切った動きもあるので一概には言えなくなってきました。
個別案件に応じたきめ細かい専門家の活用が必要
最近になって、過去数年前に作成した長期修繕計画では想定通りに予算が合わなくなってきているといった声がよく聞かれます。
修繕業者も今すぐ検討、結果のでる見積なら見積有効期限内での発注検討前提なので対応してくれるのですが、数年先の計画見積には消極的な対応が目立ってきました。
経験、実績豊富な専門家の活用からある程度の予測、推定に基づいた計画修繕が求められる状況になっています。
ささいな事でも、エレベーターに関するお問い合わせお待ちしています。
初回相談、現地調査訪問は無料(近畿2府4県に限ります)