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保守(メンテナンス)

エレベーター保守・リニューアルの保守部品について

2024年5月20日

2024 05 20
たくさんに積み上げられた機械の部品(ギアなど)

エレベーターリニューアル工事の主要パーツ構成(ロープ式)

建物内に設置しているエレベーターは大きく5つに主要な部品構成として分類されます。

1,エレベーター機械室

  • 制御盤・・・エレベーター運行する総合司令塔。人間で言う頭脳の部
  • 巻上機・・・エレベーターを駆動させるモーター、駆動力を伝達するギアとシャフト、安全に停止し、固定保持させるブレーキ。動力部分。
  • 調速機(ガバナ装置)・・・かごの昇降速度を検知する非常停止装置。
  • 地震感知器(S波)・・・主要動にいる地震感知器

2,昇降路

  • 主ロープ・・・人が乗るかごとおもりが対になって連結され巻上機の滑車を起点にかごーおもりでバランスと取ってそれぞれが互い違いに上下に昇降させる、かごとおもりを繋いでいるロープ。
  • 近接スイッチ(着床スイッチ:インダクター)・・・かご上に設置されておりかごがフロアに停止する際に減速・停止位置を検出する装置。
  • リミットスイッチ・・・昇降路内の終端階(最上階、最下階)付近に設置するスイッチも総称で近接スイッチが正規に作動しなかった場合、終端階を行き過ぎないように強制的に減速・停止させる装置。
  • ガイドシュー・・・かごとおもりをレールに固定して上下に昇降させるためにガイドし、スムーズな乗り心地を維持させる。
  • 制御ケーブル・・・機械室にある制御盤とかごを通信する配線ケーブル

3,かご室

  • かご上操作ボックス(かご上操作装置)・・・かご内の信号(行先階登録、着床位置認識、表示、安全装置信号、インターホン信号等)の集積回路が内蔵されたボックス。
  • ドア駆動装置(ドアモーター、ドアドライブ、ドアユニット)
  • かごの扉に設けられモーターでかごの扉を駆動し機械的係合装置を介して乗場の扉を同時に開閉する。開閉装置は電動機、減速用歯車、電動機制御ボックスにより構成される。
  • かご内天井照明LED化・・・2,3年後には蛍光灯が廃止、消滅。器具交換か天井デザインごと一式交換。
  • ゲートスイッチ・・・エレベーターの基本的かつ重要な安全装置。かご及び昇降路のすべての出入口の扉が閉じていなければかごを昇降させることができない装置と規定。
  • かご内操作盤・・・行先階押釦、非常ボタン、位置表示器、インターホン、操作スイッチボックスで構成。

4,乗場

  • インターロックスイッチ・・・各階の乗場扉に設置されており扉が閉まりきりロックが掛かった時に入るスイッチ。このスイッチが入らないとエレベーターは動かない。
  • 乗場操作盤・・・各乗場からかごを行先方向に応じて呼ぶ押釦とかごの位置を表示する表示器が設置

5,ピット

  • 安全停止スイッチ・・・メンテナンス専用
  • 調速機返し車・・・機械室調速機の折り返し用滑車
  • 地震感知器(P波)・・・初期微動による地震感知器

以上がエレベーターリニューアル工事メニューの最もオーソドックスな仕様となります。
ほぼどこのエレベーター会社もこの仕様をベースに見積を提示してくるので、比較検討する際に、会社によっては同じ機能の部品なのに呼称が違ってたりと一般の方では難しい作業となります。

エレベーターリニューアル工事に含まれない保守各パーツについて

メーカーでは自社製品の耐用年数がパーツごとに設定されています。概ねメーカー系保守会社の保守員はその周期をベースに見積提案を上げてきます。バッテリーについては劣化状況関係なく年数で提案してくるのは分かるのですが、半導体部品である電子基板となると耐用年数+調達期間(数か月~1年)なので非常に発注時期が難しくなってきました。

ワイヤーロープ、連動ロープや各種のローラー、各箇所をガイドするシュー等は利用頻度、環境によって摩耗し異常があると異音がしたり振動したりと症状が目に見えて確認できるのですが、エレベーターは出来れば事後保全ではなくあくまで予防保全がセオリーと認識してください。

ワイヤーロープとブレーキに関する制御リレーについては定期検査報告対象となるのであまりに放置しすぎると保守会社からの報告で「要重点点検」「要是正」で報告を上げられ管轄の建築指導課から通知のハガキが所有者宛てに届くことになります。

  • 非常灯電源装置・・・停電、閉じ込められたときに外部通話と停電灯のバッテリーを内蔵した装置。
  • 巻上機ギアオイル・・・巻上機ギアボックス内の潤滑油
  • 制御盤内各制御リレー・・・電気信号を受ける事により機械的な動きを行う電磁石と連動し〈入〉、〈切〉を行う電磁接点で構成されている。
  • リュブリケーター(給油機)・・・かご・おもりとレールの間の潤滑油を均等に塗布しスムーズに昇降する為の部品。破損劣化すると油切れとなり乗り心地に悪影響を与える。
  • ブレーキライニング板・・・ブレーキを保持する為のライニング板。
  • マイコン基板・・・制御指令を伝達する為の基板
  • インバーター・・・速度指令などすべての動きを制御する装置
  • ドアシュー・・・敷居とドアを連結させるシュー
  • ドアワイヤー・・・ドアを開閉させるワイヤー
  • ドアベルト・・・ドアを開閉させるベルト
  • メインシーブ、セコンドシーブ・・・かごを昇降させる滑車の溝に主ロープが掛かって金属の溝部分とワイヤーロープの摩擦でかごとおもりを昇降させている。
  • ドアハンガーローラー・・・扉をレールに吊っているローラー
  • シーケンサーユニット・・・すべての動きを制御している頭脳。
  • 巻上機ベアリング・・・モーターから滑車へ力点方向を転換させて伝える。劣化が進行してくると異音、振動発生し放置するとモーターに過負荷がかかり焼付き損傷する。

定期的な点検を通じて保守会社メンテナンス員が記述する点検報告書にはこのような機器の劣化状況が記載されてきます。

見積と同時に必ず、その見積対象となる写真、イラスト付きの部品説明書を添えて詳細な説明を受けるようにしてください。

保守会社はとにかく、劣化状況の報告と見積を提案すればあとは故障が起ころうと所有者の責任になるといったスタンスになります。

ヒアリングから状況判断し、金額と時期的な兼ね合いから部品発注を検討する事になります。

エレベーターパーツの製造、調達、流通 今後の予想

半導体関連の電子基板類について大手メーカーからの納期回答はかつてない程に不透明で長期化しています。

それに伴って、部品単価も数か月単位で1割弱のペースで値上がりしており非常に予防保全管理が難しくなってきている状況で、いかに計画的、効率的に予防保全を管理し実行できるかが大きな課題となります。

前回のコラム(エレベーター改修工事の施行能力について)で触れたように現場作業者の人員不足が深刻であるのと同様に部品調達に関する電気設計、機械設計の経験豊富な従事者がエレベーター保守会社各社で急減している現実も目の当たりにしています。

「故障が起こって直そうにもこの部品は今のどの部品が代替なのか?」、「この部品はどこに問い合わせればいいのか?」、「製造していた会社が倒産、消滅して復旧の目途がたたない。」等日常的に聞くようになりました。

部品の流通ルートも大部分が海外に拡がり複雑化して、ベテラン社員が引退、退職され後継されないまま現場で事件が起こっている状況です。

昨今の円高により今までにないペースで単価が上昇してますが、一部では部品の製造、調達を国内に回帰する動きもあります。

品質、工程、コストも安定して明確でかつちょっとした変更、アレンジも加える事ができれば、何もわざわざ海外に頼る必要はありません。

実際そういった転換を進めている経営者の話を聞いています。

時代は繰り返すのでかなり現実的な未来ではないでしょうか?

エレベーター所有者、管理者としての対処法

エレベーターリニューアル工事の検討を迎えるにあたり、リニューアルを構成する基本的な部品構成を整理、画一して現状の保全状況を詳細にピックアップし、現場エレベーターに今必要な工事仕様はどうなるのかを確定しなくてはいけません。それには本業のお仕事を抱えながら管理組合でマンション全体の管理をしかも輪番制の1年交代でこなしていく事は非常に難しい事だと感じます。

リニューアルまでまだ数年先であれ、日常的な細かい部品交換は必ず発生するのでその都度効果的、効率的な保全計画で修繕を行う事は経験豊富で専門的知識を備えたコンサルタントに相談されてみてはいかがでしょうか・・・・。


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