長期修繕計画にエレベーターリニューアル工事を組み込む現状の問題点
エレベーターリニューアル工事の資材、人員不足からの納期長期化、遅延化からいかに数年先を見込んでの予算計画化が重要であるかが一般的になりつつあります。
ここ最近、エレベーターリニューアル工事をいつ、いくらで長期修繕計画にのせればいいのか?といった問い合わせが増えています。
第一回目の大規模修繕工事を終えて、5年後くらいの時期なので築17~20年程度のマンションになりますが、国交省が推奨している5年ごとの長期修繕計画の見直しのタイミングです。
特に、この数年の間で建設資材が過去に例を見ない上昇率なので、この時期の長期修繕計画の見直しの重要性は高いと言えます。
外壁塗装、タイル、屋上防水工事、給排水設備、LED照明、立体駐車場等、国土交通省発行の“長期修繕計画ガイドライン”に則ってその工事実施時期や金額をマンションの規模、仕様に当てはめて計画表を作成するのですが、エレベーターについては、どうでしょうか?
多くの管理会社や修繕コンサルタントは同様に“昇降機設備 補修12~15年、取替27~30年の記載を参考にしているでしょう。
そんな一般的な机上論ではなく、今から10年先のエレベーターリニューアル工事の予算を計画計上するには、どういった根拠で、いくらで計画計上するのでしょうか?
国交省のガイドラインでは、取替工事“¥10,350,000-“とされていますが、恐らく、何らかの統計上の平均値を載せているのだと思われます。
この頃の設置されたエレベーターはほぼ、ロープ式マシンルームレスエレベーターになります。マシンルームレスエレベーターのリニューアル情報は以前のブログで紹介した通り、一部のメーカーの部品供給終了により、制御盤と電機品のパターンとそれに加えて巻上機を交換しなければならない2パターンがあります。いわゆる、初期型のマシンルームレス型のエレベーターが対象となるのですが、現在ではメーカー以外の独立系保守会社で見積対応できる会社は中小の保守会社数社となっており、一般的には見積が取りにくい状況です。
マシンルームレス型エレベーターリニューアル工事見積について – ブログ | エレベーターマネージメント
仮にこの状況のままで、10年後のリニューアル工事を試算すると、メーカー系保守会社の価格帯で制御盤と電機品のみのパターンで700万~1100万円。
それに巻上機を加えたパターンとなると、1700万円~2300万円と推測されます。
現時点で、まだ部品供給終了のメーカーサイト告知がない状態でメーカーに見積依頼をしても正式な見積は出てこないでしょう。
口頭ベースで大体〇〇くらいだと思います・・・。といった曖昧な返答が関の山です。
長期修繕計画にエレベーターリニューアル工事を組み込むには
私がまだ、エレベーター保守会社に在籍していたころは大手管理会社の長期修繕計画を専門に扱う部署らしき担当者から連絡があって、
“数日中に〇〇マンションの8年後のリニューアル工事の見積を出してほしい”と要望されました。
“この機種はまだ弊社ではリニューアル製品が開発されていないので見積は出せません。”
“大体でいいから、ザクっと概算でいくら?”といったやり取りで、こちらもリスクを取りたくないので、
“その場合はリニューアルではなくて一式入れ替えの撤去新設になります。それでもいいですか?”
“仕方ないから、いいですよ。いくらですか?”
“建築費込みで、3500万円くらいになります。”
“そんなにするのですか!?高すぎるんじゃないですか!?”
このような、不毛なやりとりを何度としてきましたが、なぜ、見積がだせないのか?どういった機種のエレベーターを想定しているのか?工事の仕様はどう捉えているのか?といった、建設的な内容はありませんでした。
膨大な量の案件を右から左へ事務的にこなしていかなければならないので、こういった議論に時間を割く事はできないのでしょう。
まずは、自身のマンションに設置されているエレベーターは設置から何年製で、何か所停止、何人乗りの〇〇製のエレベーターだけでも調べた上で、メーカーホームページの部品供給終了の案内のサイトを開いてください。
現在2社がマシンルームレス型(機械室レス)エレベーターの部品供給停止案内が公表されています。
その内、1社は制御盤の基板、もう1社は制御盤の基板と巻上機も供給終了となっています。
その上で、想定される工事金額を予算計上するのが一番現実的な想定金額となります。
それ以外のメーカー、機種については一般の方では判断が難しいので、一度弊社にお問い合わせいただくのはいかがでしょうか?
予想:想定力は長年の専門的な経験と実績から
世の中の物価高で、も特に建築資材は顕著です。7,8年前のエレベーターリニューアル4基の見積金額で当時¥98,000,000-が、現在¥130,000,000-。
約3割増です。通常通りの相見積もりから競合させての値引き交渉をしても、受注バックオーダーを1年先まで抱えているので交渉のテーブルにつこうとしません。業界の動向や製品開発、各メーカーの部品供給終了のタイミング等を見極めた上で、情報を収集し効果的、効率的な仕様の逆提案をこちらから仕掛けなければ、今までのような手法での安全性と品質を維持しコストダウンを図るのは難しくなってきました。
管理会社からの委託管理費の増額要請や修繕積立金の増額決議など、新聞マスコミでも取り沙汰されてますが、消費者サイドへの逆風はしばらく続きそうです。
専門的知識と経験を駆使してこの逆境に立ち向かってまいりますのでどんな些細な事でもご相談、お問い合わせください。