見積仕様項目より、むしろ重要な内容が記載
各エレベーター会社から皆さんが見積書を受領されると、まず一番に目が行くのが見積金額の総額と思います。
見積書表紙に最も目立つ箇所に記載されていますが、その後のエレベーターの主要なスペック、製造年月日、各交換ヶ所の項目がその見積金額の内訳や実際の工事内容の中身になるような記載構成になっています。
その1ページ目の表紙の下段に“備考”とくくられた欄や、一番最後のページに“注意事項”、あるいは、“除外工事”と別紙で添付されている内容について紹介したいと思います。
記載箇所や、表題名は各社によって違いがあるのですが、契約書の約款の様に一般的な内容が儀式的に付いていると認識されている方が多いのでは?と思われるのですが、気を付けなければ後々大きなトラブルに発展する場合があるのです。
エレベーター会社によっては、見積書のフォーマットが決まっていてどの案件も同じ内容になっているケースもあれば、きちんと案件ごとに細かく見積条件に当てはめた内容が記載されている場合もあり、金額に影響を及ぼす重要な内容なら、契約した後、あるいは着工し工事中の最中に追加工事の発注を要請されるケースもあるのです。
もちろん、見積段階で内容について十分な説明を受注者側は発注者側に果たす責任があるのですが、言った、言わないといった双方の杭互いになった時に、この見積書に記載されてる“備考、注意事項、除外工事”が責任の所在の分岐点となるので、ある意味、見積の工事項目より重要と捉えるべきと私は考えます。見積書の工事仕様である専門用語も一般的には分かりにくいですが、この備考、注意事項、除外工事はさらに難解な内容と言えます。
見積書備考欄の注意事項と除外工事
以下はよく記載されている見積書の“備考、注意事項、除外工事”の記載例になります。
【想定外の事が発生した場合の断り】
・現場詳細調査の結果、搬入方法及び工事期間、施工箇所が変更となる場合がございます。
・本工事は既設建物、昇降路内に新規機器が納まる場合に限り施工が可能です。また、付帯工事項目に関しては見込み項目としており、増減する場合があります。
・その他仕様については弊社標準仕様となります。
・建築付帯工事が発生した場合は別途見積書を提出いたします。
【作業条件における注釈】
・一部部材については調達納期の関係上、別途工事となる場合がございますことを予めご了承ください。
・本工事は弊社勤務時間内での作業となります。
・時間外作業につきましては作業費を割増にて精算させていただきます。
・本見積は平日昼間連続停止作業の標準工法とします。異なる条件の場合は別途見積とします。
・本工事で必要な水、電気、作業者の休憩所、トイレ、資材置き場の提供を無償提供願います。
・本リニューアル工事期間中は最下階、最下階上階、最上階乗場付近及び機械室にストックヤードのご提供をお願いします。
・本リニューアル工事期間中は工事車両の駐車スペースを確保ください。
・楊重方法は階段楊重とします。壁面にアンカー打設して楊重が必要な場合、壁面補修は含まれておりません。
・工事方法は既設配管又はダクト流用方式とします。
・全階乗場三方枠塗装作業中及び作業後は異臭がしますのでご了承ください。
【アスベスト、PCBに関する所有者責任についての注意事項】
・石綿、ポリ塩化素材に関する諸対策は本工事から除外いたします。
・本工事施工に伴い本工事箇所にアスベストの使用の疑いがある場合は、事前にアスベスト有無の確認を別途料金で実施させていただきます。なお、吹き付け材、保温材、耐火被覆、断熱材、吹き付け石綿扱いとなる仕上げ塗料にアスベストが含まれていることが確認された場合は、大気汚染防止法遵守等の観点により、工事着手までに届け出及び当該作業箇所の諸対策(封じ込め又は除去)を実施願います。また、アスベストが使用されている場合は工事期間が延長となる可能性があります。(本見積工事の除外工事)
・低濃度PCB含有機器は(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法 *PCB特措法)により所有者様に届け出や保管及び処分などの義務が課せられています。本工事対象のエレベーターに低濃度PCB含有の可能性を否定できない機器が使用されていた場合、同機器の取り外し後は、所有者様にて検査機関へPCBの分析依頼をお願いします。尚、検査の結果、PCBの含有量が基準値(0.5mg/kg)を超えますとPCB廃棄物となり、PCB特措法に基づき所有者様が届け出、保管、処分(処分期間2027年3月31日)を行う必要があります。(エレベーター除外工事)
【了承、手配要請を求める内容】
・天井照明取替の場合、天井高さは既設より○○mm低くなりますのでご了承ください。
・かご内防犯カメラ付きは着工までにお客様側にてカメラ業者手配の上、カメラ脱却及び工事完了後のカメラ取付けと動作確認の依頼をお願いします。
・工事施工にあたり現在のモーター容量よりも増加する場合がございますので予めご了承ください。
・昇降路外部配線工事が必要な場合は除外工事とさせていただきます。
・かご等の内装仕様が弊社施工外(別途工事)の場合、製品保証対象外です。また、内装施工時は関係法令遵守の上、強固に取り付け願います。
見積書に記載されている内容は決定・契約前にすべて整理、把握するべき
これらの項目は、見積書の本工事内容とは目立たない箇所に小さめの文字で細かく記載されています。
いかがでしょうか?至る箇所に”別途工事”、”エレベーター除外工事”、”所有者様の責任で処理、手配ください”、”~ご了承ください”といった文言が並んでいます。双方が全く同じ認識で契約し、工事を迎えて無事完了したなら、問題は起こりませんが、何の説明も無しに後々工事の打合せが進むにつれて思っていた内容と違っていた事例が意外と多いのです。
本来は、見積受領時に対面で説明を受ける際にある程度のこういった見積注意事項について、本工事の説明と合わせて受けるのですが、見積受領はメールで受信するのみのケースが増えているため、スルーされた状態で見積金額だけで業者決定、契約発注されるパターンが多いように思います。
エレベーター会社もメールでいいと言われたのだから、見積書内容については熟読していると解釈し、さっさと契約手続きを進めて、契約後の詳細打合わせで聞いていなかった、そんな認識していなかったとトラブルとなり、最悪契約破棄、キャンセルとなる事例も聞かれます。
その他、定期検査に関する既存不適格についての注意事項であれば、大きく金額に影響を及ぼす事になるので重大な問題となるので、慎重に内容精査する必要があるのです。
そうなってしまう前に、第3者によるコンサルタントをアドバイザーとして採用する検討をお勧めします。