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リニューアル 保守(メンテナンス)

油圧エレベーターは将来なくなるのか?

2025年3月23日

2025 03 23

エレベーター保守台数の推移

建物竣工から20年以上経過した7,8階建てまでの中低層マンションには油圧式エレベーターが一定数の割合で存在しています。

自身のマンションのエレベーターが油圧式なのか、一般的なロープ式なのかはエレベーター機械室という普段扉が施錠されている部屋が1階エレベーター乗場付近にあるかで判別できます。1階にはなくて、屋上にあればロープ式ですし20年未満の比較的新しいエレベーターならエレベーター機械室がないタイプもあります。その場合は機械室のないロープ式エレベーターといって、機械室レス型と言います。

現在、25~30年以上経過している油圧式エレベーターがリニューアルの時期に差し掛かり、この機会に油圧式から最新の機械室レス型に入替る工事が全国で進行しています。

エレベーターの制御関係、駆動関係、構造関係と普段皆さんが乗降しているエレベーター室内“かご”も取替となるので、エレベーターリニューアル工事と言うよりは、撤去新設あるいは準撤去新設工事の意味合いが強い規模の内容になります。

それでは、全国的にこの9年間でどれくらいの推移で油圧エレベーターの台数が推移しているかと合わせて従来からのロープ式エレベーターの機械室があるエレベーターの推移と、最新機種として急増している機械室レス型のエレベーター台数、日本全国すべての昇降機の設置台数についてグラフ化しました。

(*数値データは日本エレベーター協会HPから抜粋いたしました。)

10年前から油圧エレベーターについては、約18,000台減少しています。

10年前から機械室のあるロープ式エレベーターについては、約30,000台減少しています。

10年前から機械室のない機械室レス型ロープ式エレベーターについては、約106,000台増加しており、2019年を境に機械室のあるエレベーターからの台数が逆転しています。

10年前から昇降機すべての設置台数は91,000台増加しており、その大半は機械室レス型の増加分と言えます。

機械室レス型ロープ式エレベーターが販売されてから、約20年経過しましたが、新築市場では油圧式エレベーターは特殊な用途を除き、ほぼ設置されなくなったので、その影響がこの数値に表れています。

この油圧式エレベーター減少分の約18,000台は建物解体撤去を除き、ほとんどが、リニューアル時期を迎えて機械室レス型ロープ式エレベーターに入れ替わったと推測できます。

油圧式、機械室レス型ロープ式エレベーターのメリット、デメリット

〇油圧式メリット

工事コストが安い

工期が短い

契約から着工までの納期が比較的早い

構造、仕様が同じなので確認申請不要(行政手続きが不要)

●油圧式デメリット

機械室内の作動音

消費電力がロープ式より大きい

作動油が劣化した場合、気温により着床段差発生の場合がある

保守部品点数がロープ式に比べ多い

〇機械室レス型ロープ式エレベーターのメリット

エレベーター機械室が不要になる

最新の基準による安全装置や耐震の機器に入れ替わる(既存不適格が無くなる)

油圧式に比べ消費電力が小さい

インバーター制御のギアレスの為、乗り心地、静粛性が高い

●機械室レス型ロープ式エレベーターのデメリット

工事コストが高い

工期が長い

既存建物構造よりエレベーター荷重作用点が変わる事による構造設計、設計検証、建物変更申請、エレベーター確認申請が必要(設計コスト発生)

昇降路内に鉄骨等補強工事必要の可能性

既存昇降路寸法の関係上、かご寸法、積載数値が縮小する可能性

電源位置変更による電気工事が必要

油圧式エレベーターの近況

国内のエレベーター市場では、油圧式エレベーターはもはや時代遅れの印象を持たれている方が多いですが、世界に目を向けると決してそうではないようです。

世界市場では油圧バルブの技術革新も見受けられ、バルブの制御を人工知能(AI)が、油温:粘度:負荷等の外部情報を収集、解析し最適な起動:加速:定格速度から減速:停止までスムーズな波形による走行曲線を描き今までにない静粛性、低振動に優れた乗り心地の油圧エレベーター改修工事を実現しています。

電子基板の自己監視機能と学習運転が安全性の高い安定した稼働:運転の維持を確保している。

従来は熟練技術員による経験値からの調整作業が多かったがAIにより、短時間で高レベルな安定した品質の保持が可能となっています。

*世界の油圧バルブ市場

 BUCHER(スイス)、Eaton(米)、Blain(米)、Maxton(米)、TAIYO(日本)

油圧式エレベーターの今後

全国のエレベーター設置台数データからはこれからのエレベーターの機構については機械室レス型ロープ式エレベーターが主流となり、油圧式はじめ、従来からの機械室のあるロープ式エレベーターは1回目のリニューアルが過ぎて、2回目となる設置から50、60年経過の時、建物全体の保全と一緒にエレベーターをどうリニューアルするかによって、全撤去新設の機械室レス型に入れ替えるのかといった選択肢が出てくると思われますし、油圧式、機械室ありロープ式エレベーターは、更に台数は減少していくでしょう。

過去10年の増減率では、

全国のすべての昇降機設置保守台数・・・9%増

機械室レス型ロープ式の昇降機設置保守台数・・・47.5%増

機械室ありロープ式の設置保守台数・・・10.6%減

油圧式エレベーターの設置保守台数・・・24.2%減

これらの数値からは、緩やかではあるものの、油圧式エレベーター設置保守台数は毎年、2,000~3,000台ずつ減少していくでしょう。

しかしながら、ある時に突然急激な減少があり、保守部品も無くなり保守対応が困難になる事はないと考えます。

国外では油圧エレベーター、油圧機器関連部品は生産され、さらに開発もされていますし、国内でもロープ式では建物構造的に対応できない積載のエレベーターでは、今でも油圧エレベーターが設計されています。

最も懸念されるべきは、技術者の育成の過程で油圧式エレベーターの技術的な継承が行われなくなっている状況があります。

これは油圧式エレベーターに限られた話ではなく、一昔前のロープ式にしても細かい機械的な調整、目視、異音からの不具合原因の特定、電気系統等の長年の経験実績からの対処法など最新の機種ではPCに入力コネクターを指してエラーを特定し、不具合箇所を一式交換するだけの保守手法によって、違いがはっきりしています。

大手かそうではない中小の、どのエレベーター保守会社にどういった技術員が対応してくれるのかなんて、見積段階では判明、判断できません。

長年の業界内の知見と公平な立場からの助言、アドバイスにより、より各現場のエレベーターに寄り添ったベストマッチングしたリニューアル検討が可能となります。

特に油圧エレベーターの所有者様、管理組合様、管理者様は弊社までお気軽にお問い合わせください。

初回相談、現地調査訪問は無料(近畿2府4県に限ります)

お問い合わせはこちらまで。